2013/03/03

CSRに関連する二つの傾向

「Craftsman、お前がsustainabilityとかsocialとかっていうものに問題意識を持って取り組もうとしているのを一年間見てきた。でも、俺とお前だけの間の正直な話、今後ビジネスがそういう取り組みを実行していくと、本気で思っているのか?」

ビジネススクールのクラスメイトでマルセイユ出身のユダヤ系フランス人であるJにそう言われたのは、お互いにロンドンで働き始めてからでした。彼はマルセイユ出身者特有の道楽者の雰囲気を惜しみなく出しながら、ユダヤ教徒としての食生活を忠実に守る真面目さを持ち合わせており、授業ではいつも核心をついた意見を述べ、鋭い質問をし、私もプレゼン後に彼からクリティカルな指摘を受けて回答に苦慮したことがありました。今はロンドンにある不動産系のprivate equityで働いています。

質問に対して、本気で思っている。でもそうなるように企業を促していく必要はあると思う。政府だけでは出来ないことがあるから、企業の活動を引き出していくことが必要なんだ。という主旨の回答をしました。

「そうかな?企業がそういう取り組みを増やしていかなくても、例えば今の金融業界は政府が積極的に動いてきたことで、数年前に比べてずっとリスクが低くなり、安定なシステムになっている。何故企業が自ら取り組んでいく必要があるんだ?」

彼はいつも極めて現実主義的であり、率直であり、これらの質問を受けた時にはJらしいな、と思いました。彼は決して私が無駄なことを考えていると言いたいのではなく、彼自身はビジネスは所詮ビジネスであり、企業が社会にプラスとなる取り組みを積極的に行うような状況を作るというのは非現実的だと考えていると同時に、本当にそんなことが出来るのか、出来るとしたらどのような方法がありうるのか、どのくらい可能性があるのかということを純粋に知りたかったのだと思います。

Jからの2つの質問は、今の社会の2つの傾向を炙り出してくれる質問だったと思っています。1つ目はsustainabilityやsocialといった言葉で形容される企業活動に対する「関心の二極化」、2つ目は政府が十分に役割を発揮できないことが増え始めているという「政府の限界」です。

この社会の2つの傾向について、次回以降の投稿で見解を述べたいと思います。

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