2013/02/28

CSRの定義

CSR、CSRと言いますが、CSRとは本当はどのような意味なのでしょうか?前回の投稿にも書いた通り、CSRには環境や慈善事業などの印象が強く、多くの人が企業が事業活動のついでに行っているもの、くらいの認識を持っているのではないかと思います。

私が欧州留学を目指した大きな理由の一つが、欧州連合(European Union)の進めるCSR政策にあります。私の知る限り、欧州連合はCSRの定義付けを行っている唯一の政府組織であり、欧州ではCSRを促進するガバナンス体制、つまり政府として企業のCSR活動を促すにはどのようにすれば良いかということについての議論が活発に行われています。そのような欧州連合の設定している最新のCSRの定義はこうなっています:

"The responsibility of enterprises for their impacts on society" (社会に与える自社の影響に対する企業の責任)

非常に幅広い定義ですが、これは非常に核心をついた定義であり、企業の責任が広いからこその定義だと私は思っています。この欧州連合の提示するCSRの定義を丁寧に見つめることでCSRの本質が見えてきます。

上述のEUの提示するCSRの定義に出てくる言葉の中でまずカギとなるのは「社会」という言葉です。CSRはそもそもCorporate Social Responsibilityという言葉の略であり、日本語では企業の社会的責任で、社会という言葉が重要なキーワードとなっています。では企業がCSRを考える上で認識すべき社会とは何なのでしょうか。その答えはステークホルダーです。ステークホルダーとは日本語でいうところの利害関係者であり、企業の事業運営からプラスやマイナスの影響を受ける人達を指しています。資金調達においては株主や銀行、資材調達においてはサプライヤーや物流事業者、製品製造においては工場の従業員や工場の周辺環境やコミュニティ、製品販売においては販売チャネルや顧客など、ステークホルダーは事業運営のあらゆる場面に存在しており、企業の事業活動の一つ一つが彼らに影響を与えています。CSRにおいて企業が考えるべき社会というのは、事業運営上に存在するステークホルダーの集合体と捉えることができます。


これらを踏まえると、CSRとは自社の事業運営の各プロセスや結果において、あらゆるステークホルダーに与えるマイナスの影響をゼロに近づけていく責任であり、その上でプラスの影響をより大きくしていく責任のことを指すと言えると思います。

ではステークホルダーに与えるマイナスの影響を出来る限り抑え、プラスの影響を大きくしていく上で、企業は何に取り組むべきなのでしょうか?また何故EU政府はわざわざCSRを定義付け、CSRを促進する方法について議論しているのでしょうか?これらの疑問については、また改めて考察したいと思います。

若い世代に考えてほしい、企業の社会的責任


ProfessionalとしてCSRを考える
「CSR」という言葉は、5年程前に比べて認知度は飛躍的に上昇しましたが、まだ多くの人にとって馴染みが薄く、「社会貢献活動」「環境保護活動」「寄付」などの印象が強いために、本来の意味や可能性が見えにくくなっている現状があると考えています。このブログを通じて、自分がCSRについて見たり聞いたり読んだりしたことをまとめ、特にこれからプロフェッショナルとして様々な領域で活動していく若い世代の人たちに、CSRの重要性と可能性を認識して貰えたらと考えています。


私はフランスのパリ郊外のビジネススクールで勉強した後、今年の1月よりロンドンにある社会的責任投資の国際的な調査会社で働いています。社会的責任投資についてはまた詳細を投稿したいと思いますが、社会的責任投資の調査会社での仕事を通じて、

  • 責任ある企業行動を促すインセンティブ
  • 責任ある企業行動の適切な評価方法
  • 責任ある企業行動のベストプラクティス

などを勉強したいと思っています。

欧州において、企業の力を持続可能な社会の発展に繋げるにはどうすれば良いか、より良い社会を実現する為の原動力としていくには何が必要なのかということを考え、行動している人たちのことを何人も見聞きしてきました。日本企業の多くも様々な要因からCSRの重要性や必要性を認識し、ここ10年ほどで大企業を中心にCSR関連部署の設置やCSRレポートの作成等の行動を一気に進めてきました。今後の課題は各企業の中でCSRの重要性がしっかりと浸透していくことであり、これからの経営や経済を担っていく若い世代がCSRに積極的に取り組むことだと思います。

このブログによって若い世代の人たちがCSRについて具体的な問題意識を持ち、それぞれのプロフェッショナルの領域で責任を持って行動し、周りの人達にその意識がどんどん伝播ていくことに繋がればと思っています。