漱石の指摘する自己本位の考え方や、憲法が定める基本的人権や幸福追求権の在り方は、要は「好きなことをすれば良い、だけど他の人が不快に思うことはすべきではない」ということだと思います。この考え方がCSRを考えるにあたっても重要だと私は考えています。
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企業活動の結果としての環境問題も、 将来の世代という第三者への不利益と 捉えることができます |
先日の政府の限界と企業への期待とも関わりますが、企業が社会に与える影響力の大きさは拡大しています。漱石が私の個人主義で指摘しているのは個性・金力・権力の展開において他者をしっかり尊重することが重要であるということですが、企業はまさしくこの3つの力を様々な場面で展開して行くことができます。
「個性」は企業が持つ各企業毎に異なる事業プロセスや製造工程、またその結果としての商品やサービスと言えます。それらを実行し提供していくにあたって、他者(=ステークホルダー)に与える影響をしっかりと考える必要があるということです。
「金力」はそのまま、企業が持っているお金と言えます。企業が収益を悪いことに使おうと思えば、当然悪いことにも使えますし、その使い方次第で社会を良い方向にも悪い方向にも導くことができます。企業はお金の使い方に良く注意する必要があります。
「権力」は企業が実質的に持ちうる権力と、企業が政治権力へ与えうる影響力の2つがあるように思います。実質的に持ちうる権力としては、例えば大企業が中小サプライヤーに対して持つバーゲニングパワーが上げられます。また政治権力へ与えうる影響力としては豊富な資金力を活かしたロビー活動などが当たるだろうと思います。これらの権力も、企業が乱用すれば社会にネガティブな影響を与えることになります。
公共の福祉を反しない限り幸福追求権が保障されるという憲法の精神に則るならば、公共の福祉に反する=外部不経済を与える企業活動は認められないということになります。そういう状態にならないように、漱石の言葉を借りれば、企業は「倫理的修養」を積んで「人格」を磨いていくことが求められますし、社会としても外部不経済を認識し、それが是正されるような措置をとっていくこと、またそもそも外部不経済が発生しないような仕組みをあらゆる面で作っていくことが必要になるだろうと思います。
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