2013/05/06

チョムスキーと企業

「アメリカの良心」
とも呼ばれている
初めてチョムスキーの存在を知ったのは2008年にNHKの「未来への提言」という番組をみた時でした。彼が出演した際のテーマは「真の民主主義を育てる」であり、番組中にアメリカの民主主義の劣化や、イラク戦争や、京都議定書への反対などに現れた当時のアメリカの単独行動主義を痛烈に批判していた記憶があります。

先日(3月頭)チョムスキーがある論稿を発表しました。
http://www.alternet.org/noam-chomsky-can-civilization-survive-capitalism

"Can Civilization Survive Capitalism?"と題されたその論稿はやはりアメリカ社会の現状を憂うもので、いつも通り、その現状を痛烈に批判しています。論稿の中で、チョムスキーは今のアメリカの民主主義を"really existing capitalist democracy"、略して"RECD"と呼び、これは真の民主主義とは呼べないと指摘しています。民主主義とは本来公共の意思がしっかりと反映される形で政策が策定・実行される政治体制を意味し、現状のRECDは"plutocracy"(金権政治)であり、その本来の民主主義から大きく乖離していると。

2003年に和訳が発行された著書「メディア・コントロール」の中で、チョムスキーは2つの民主主義社会について述べています。一つは「一般の人びとが自分たちの問題を自分たちで考え、その決定にそれなりの影響をおよぼせる手段をもっていて、情報へのアクセスが開かれている環境にある社会」であり、もう一つは「一般の人びとを彼ら自身の問題に決してかかわらせてはならず、情報へのアクセスは一部の人間のあいだだけで厳重に管理しておかなければならないとするもの」です。チョムスキーは後者の民主主義こそ現在のアメリカにおける民主主義であるとしており、今回の論稿はこれらのことを改めて指摘したものと言えます。

チョムスキーのこれらの指摘は、現在の(基本的にはアメリカにおける)企業と政治の関係に対する彼の否定的な(というよりはこれを完全に否定する)見方と密接に関わっています。彼の指摘は決して難しいものではありません。むしろ単純とすら思えます。要は企業が主に広告主としてマスメディアに影響を与え、またロビー活動や献金を通じて政治に強い影響力を及ぼしている、それらの結果アメリカの真の意味での民主主義が衰退している、というものです。

今回の論稿におけるチョムスキーの主張のポイントは、現在のアメリカの民主主義が特定の利権集団の便益を偏重するシステムとなってしまっているという点だと思います。そして中でも強力な力を持っている利権集団の一つが企業だということです。チョムスキーがその著書や講演等で特に問題視している企業の影響力は以下の3点です。
  • 政治への影響力
  • マスメディアへの影響力
  • 従業員への影響力
次回以降でこの3点について私が思うことを書き、社会における企業のあり方について考察を深めたいと思います。


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